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第73回山口大学医学祭に寄せて

山口大学医学部同窓会霜仁会 会長 福本陽平

 

 今年も山口大学医学部医学祭が盛大に開催されることは、同窓生として大変喜ばしいことです。医学部の学生諸君が自らの手でイベントを企画して、それを実行し、学生時代の想い出の一ページとして成果を出すことは意義深いことです。さらに、将来の医療現場で接する市民の皆さんと交流し、医学生としての姿を見せる事も大切です。先ずは、青春のエネルギーと培った英知を医学祭にぶっつけてみて下さい。

 英知と言えば、今、世界的なグローバル化現象があらゆる分野で進行中です。同時に約500年間続いた世界の資本主義が、終焉を迎えている現状があります。即ち、これまでお金を集めてその資本を投資し、生産量を増やして全世界に品物を売り、富を獲得する資本主義方式に行き詰まりが見えてきた事です。現在、銀行にお金を預金しても利子は0に近く、マイナス金利にもなる事こそ、その終わりを示しています。21世紀初頭の我々は、世界の大きな流れの転換点に立っているのかも知れません。資本主義の終焉についてもっと知りたい人は、水野和夫著「閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済(集英社新書)」をお読み下さい。

 また、科学技術の面では、人工知能(AI)に関する研究が進んでいます。すでに囲碁や将棋の世界のみならず医学・医療の分野でも利用され、膨大な情報処理を得意とするAIの臨床応用も始まっています。米IBMが開発したAIのWatsonは、白血病患者のDNA遺伝子の変異を探し出し、過去2万件の同疾患患者の情報を学習させて患者DNAを入力すると、その白血病患者に有効な治療薬(抗癌薬)を選択してくれたことは、すでに報道されています。ところで、昨年、山口大学医学部に“人工知能・システム医学”の講座(浅井義之教授)が開設され、本学の基礎医学、臨床医学の研究に厚みが増すことになりました。

 さらにこの際、わが国の将来の医療の在り方についても、少し考えてみて下さい。少子高齢化社会の中で、国民の医療・福祉はどうあるべきか、医療崩壊が叫ばれている医療現場でどう行動すべきかは、皆さんが社会に出ると、医療の現場ですぐに直面する問題です。ともあれ、今年の医学祭「Go All Out!!~医祭合祭~」が大いに盛り上がり、熱気にあふれることを祈っています。

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